所十三の「恐竜漫画描いてます」

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<<   作成日時 : 2011/05/26 23:38   >>

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ことの発端は一昨年、千葉大学で開催された古生物学会に久しぶりに顔を出した時のことでした。

福井県立恐竜博物館の柴田さんが、勝山で見つかったイグアノドン類の亜成体の下顎についてポスター発表をされていたんです。

ちょうど我が家には、イグアノドンの発見者、ギデオン・マンテルの伝記として描いた『恐竜発見記ー霧の彼方にー』の執筆中に資料として購入したプロバクトロサウルスの下顎の標本があったので、もしかしたら、比較研究か何かの役に立つかもしれない…と、軽い気持ちで柴田さんに声をかけました。

プロバクトロサウルスは、イグアノドン類からハドロサウルス類へと進化する過程の狭間に位置する恐竜で、その下顎の標本もイグアノドン類の特徴もよく示しています。





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プロバクトロサウルスの下顎、頬側面。


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プロバクトロサウルスの下顎、舌側面。



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歯の形状は丁度イグアノドン類の大きさとデンティクル(鋸歯)を残しつつハドロサウルス類的な凹凸が発達し始めています。





仕事場まで来て頂いて、お見せしたところ、この標本がプロバクトロサウルスの論文にも図版が使われている…という有名な標本であることがわかりビックリ!

なんでも、何十年も前に中国からソビエトに向けて発送されたまま行方不明になってしまったプロバクトロサウルスの全身骨格の一部だと言うんです。

法律的には、ボクの所有に問題は無いそうなんですが、せっかく比較標本として利用価値のあるものが、正式な研究論文などに使えない…というのは、あまりに勿体ない。

ボクが此の標本を個人的に所有することが、結果的に恐竜研究にとってマイナスになりかねない…ってことなんです。

これは、恐竜のおかげで人生楽しませてもらってる人間としては、あまりにも申し訳ない…と。

…で、柴田さんにご相談したんです。

福井県立恐竜博物館の東洋一特別館長は、中国恐竜学会のドン、董枝明先生と仲が良いことで有名なので、そのパイプを使って、この標本を中国の正式な研究機関に寄贈できないか…と。


全くの善意とは言え、中国とロシアという国家まで関わってくるような話ですし、やり方を間違えば、「盗品の返却」と誤解されかねないようなビミョウな問題ですから、ボクひとりの力ではどうにもならない…と判断したんです。

ありがたいことに、東特別館長は、この面倒くさい仲介役を快く引き受けて下さり、とりあえず標本を博物館にお預けすることになりました。


…で、これまた都合の良いことに、翌年の恐竜倶楽部恒例の夏旅行が福井県立恐竜博物館に決まったので、その時に持って行くことに…。


ここでまた偶然が重なります。

ボクが福井を訪れた時、前日に講演があった関係で董枝明先生が博物館に滞在されていたんです。

東先生が董先生にボクの標本の話をした際、初めは信じてもらえなかったそうです。

40年も前に行方不明になった標本が今頃見つかるわけない…と。

そして、その標本をソ連に発送する際、梱包作業をしたのが董先生ご自身だった…と。

標本を見た董先生の感慨深げな顔は忘れません。

愛おしそうに撫でながら、何度も「間違い無い」…とつぶやかれていました。


あの時、この標本を買わなかったら…、あの年、勝山でイグアノドン類の下顎が発見されなかったら、…あの日、千葉に行かなかったら…、柴田さんが標本の出自に気づかなかったら、…東先生が董先生と懇意でなかったら…

これまでのいろんな偶然を考えると、『指輪物語』(Load of the Rings)の指輪のように、この標本は持ち主のもとに還りたかったのかもしれない…なんて気がしました。

…だとすれば、ボクはビルボ・バギンズよろしく此の標本に利用されたのかな?…(笑)。

とにかく、董先生のあの笑顔が見られただけでも、ボクの判断は間違ってなかったように思います。


そして、是非中国に…という話になって、今回の旅に繋がったわけです。







おまけです。あまり説明のいらない常州中華恐竜園内の景色を少しずつお楽しみ下さい(笑)。


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コメント(10件)

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このエピソードを
ぜひとも漫画化してほしい
と思ったくらい、すごい話ですね。
縁ってあるものなんですねえ。
KOW
2011/05/27 02:37
今回のような奇跡を合縁奇縁って言うんでしょうか。40年越しの再会…なんて創作物でも見れませんよ。
これも文字通り先生の日頃の行いの賜物なんでしょうね。
七足
2011/05/27 22:04
先生、ごぶさたです。
すごいですね。40年前に行方不明になった標本が先生の手で元の持ち主の手に戻るとは!
事実は小説より・・・ということわざを地で行ってますね。
しかし、盗まれ、いや行方不明になった化石を帰すのに北京で贈呈しきって・・・w
せっかくですから国際交流して、化石展を存分に楽しんでこられるといいと思います。
董先生の肝煎りとあれば、どんなものを見たいといってもたいがい通るでしょうから。
一生に一度のチャンスかもしれません。楽しんで来て下さい。私たちはレポートを楽しみにしてますので!
足立裕路
2011/05/28 12:08
 何やら因縁めいた話ですね。そのプロバクトロサウルスの標本はともかく、金子隆一先生のたまわく、アメリカや中国には化石の盗掘者がおり化石の国外流出に拍車をかけているということで、ぼくは少し心配になりました。今度新宿であるミネラルフェアの化石がみな正規のルートを経て出回っていることを願うばかりです。 
 ところで先生、僕は今日かはくで真鍋先生の公演をうかがってきました。ティラノの生態復元について面白い話がありましたが詳細は今夏の恐竜博で明らかになるでしょう。驚いたことに真鍋先生にお便り(むろん、内容は古生物に関する質問)をお送りしてよいかうかがうと、オーケーをいただいたのです。うれしいことこの上ないのですが、先生が僕の名前と連絡先をお教えするときにあわてて書いたので(先生が何やらお急ぎのようでした)名前をひらがなで書いてしまったのです…。いささか無礼を働いたか…。会いづらくなってしまいました…。
足立瑛彦
2011/05/28 17:28
すごい話ですねえ
KOWさんと同じく是非漫画に…
恐竜研究史に残るひとコマだと思います
短編読切、夏の特別企画!
●ャンピオンでやりませんかね(^^)v
ピカイア
2011/05/29 09:28
すごい!

是非映像化してほしいお話ですねー(((^-^)))
ちくりん
2011/05/30 21:33
うわあ。これはすごい話ですね。

研究者の元に戻って良かったと思います!
zuppo
2011/06/02 23:18
お久しぶりです。
こんな珍しいことってあるものなんですね・・・
今日からミネラルフェアが始まりますが、本物の化石に手を出して良いものかどうか躊躇ってしまいますね(笑)
カワタカ
2011/06/03 16:36
>KOWさん
>ピカイアさん
>ちくりんさん

…でも、いざ漫画化すると、どぉってこと無い話…になっちゃいそうですよね(笑)。


>七足さん

たしかに「縁」は感じますね。…日頃の行いは関係無さそうですけど…(笑)。


>足立裕路さん

頑張ってレポートします!


>足立瑛彦くん

真鍋先生は優しいから大丈夫だろうけど、それだけに、くれぐれもご迷惑かけないようにしようね(笑)。


>zuppoさん

先方さんには随分喜んで頂けたみたいで、ボクとしても嬉しいかぎりでした。


>カワタカさん

例えば、現在、化石の輸出を禁止している国でも禁止前に市場に流れたものはいくらでもある…ということで、ミネラルショーに並ぶ化石で違法なものはあまり無いそうなんですが、悩ましいところですよね。

ネットのオークションとかは危険みたいです。

所 十三
2011/06/12 14:51
掲載写真の対応、ありがとうございます。
改めて、良い標本だったことが判りますワぁ。
そして所さんの眼ですね。
ホント、どこかの出版社で漫画化を快諾してほしいものです(^^)
Ba2
2011/06/19 08:17
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